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うさぎのしっぽ。
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2024/11/24
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宴の装いを横目にしながら。
彼女はふらふらと帰路を辿る。
傾いた屋敷には人の気配が戻っていた。
お疲れ様、と、心の中でだけ呟いて、顔を合わせることなく部屋へ向かう。
避けたかったわけではなく。
ただ、疲れていた。
ただいま。
唇だけで呟くと、彼女はベッドを通り過ぎ、鏡の前にたどり着くと、綺麗に並べられた二つの花の見つめる。
青い色をした髪飾りにそっと触れ、それから、白い花冠を拾い上げ、ふわり、被る。
鏡の中の、真っ黒な自分に混ざった、白。
愛しげに微笑んで、もう一度、大切そうに元の場所に戻すと、さらりと肩を滑り落ちたショールを放り出して、ベッドに倒れこんだ。
そうして、そのまま、泥のように眠って。
目が、覚めた時には、もう、朝を迎えていた。
戦勝祝いと銘打たれた闘技場の届けに、こっそりと名前を書き足して、ゆるゆると混ざった。
眠りに落ちる前の、大きくて危険な戦いの記憶があるからだろうか。娯楽の一環として催されるその試合は、たまらなく、楽しかった。
負けてしまいはしたけれど、それでも。
来週は、久しぶりにチームを立ててみようか。ふと思案して、何の気なく、街角を訪れた。
いまだ宴の名残を見せるその場所を、のんびりと眺め歩いて、戦いの最中に綴られた記録へと、目を通していく。
知った名前が檄を綴るのを、遡って、遡って,遡って――。
指が、止まった。
「うそ……」
目が、丸くなった。
とても、とても、覚えのある名前が目に留まり、そこに綴られた言葉を、何度も、何度も、繰り返した。
呟き、なぞり、反芻して。へたり、と。その場に崩れた。
「どうしましょう……」
何故だか胸が苦しい。感情があふれて止まらない。
その少し下に、自分の名前。
誰にとは言わず宛てた、言葉。
言ってしまえば、逃げずにいられると思って。自分へ送る意味も篭めて、何気なく、綴った願い。
逢いに――。
どうしよう、と、唇が繰り返す。
意味もなく、繰り返す。
熱いのは頬か、体か、眦か。定かではないくらいに当惑した彼女は、それでも、律するように一度唇を噛み締めて。
すくと立ち上がると、踵を返した。
急くように、駆ける足は、今しがた歩いてきた道を――帰路を、辿っていった。
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2010/08/02
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