△
11
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
▽
うさぎのしっぽ。
□
[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
2024/11/24
□
意味のない祈り。
大丈夫。大丈夫。大丈夫。
まるで、呪文みたい。
薄暗い部屋の中で、女が何かを書き綴っている。
その筆圧は異常に強く、がりがりと音を立て、机が削られる音がしていた。
紙は歪んでぐしゃぐしゃになっているというのに、女は省みることなく筆を走らせた。
歪な文字が綴り、書き上げた瞬間。女は小さく息を吐いた。
深呼吸。何度も、繰り返して、昂ぶった気持ちを落ち着ける。
「大丈夫よ。きっと」
呟いた唇は乾いていた。嘆く色が濃くなる。
どうして。
音のない二言目。憤りがよぎる。
ふるふると、頭を振って、掻き消したのは。
瑣末な、瑣末な、不安。
「大丈夫よ。大丈夫」
紡ぐごとに、笑みが浮かぶ。
だが、柔らかで穏やかなそれとは対照的に、紙に走ったインクをなぞる指先は、きつく強張っている。
ぎり、と、爪を立てて。唇を噛み締めた。
溢れてしまいそうな不安は、彼女が今まで経験したことのない感情だった。
大切な、仲のよい、大好きな――そんな人間は多く居たが、彼らは皆、無縁だったのだ。
命に関わる危険とは。
抱くまでもない不安。祈るまでもない無事。
その『今まで』が、今は、ない。
「大丈夫よ」
しきりに、ただ同じ単語ばかりを繰り返した彼女は、やがて撫で付けていた紙をぐしゃりと握り締めて、机に伏した。
「大丈夫に決まってるじゃない」
不安など。祈りなど。
意味はない。
「だって、私の大切な人たちだもの」
溢れそうなものを、『今まで』で、閉じ込めて。
彼女は少しだけ、眠ることにした。
PR
2010/06/05
独り言
C:0
Trackback
Comment
Coment Form
Name
Title
Mailadress
URL
Font Color
Normal
White
Comment
Password
<<
HOME
>>
忍者ブログ
/[PR]
Template by coconuts
プロフィール
HN:
喪と石
性別:
女性
職業:
エンドブレイカー
自己紹介:
喪:クニークルス。喪娘
石:センテリェオ。末子
飴と花も同背後。
裏舞台だけの、知り合い
リンク
エンドブレイカー!
クニークルスステシ
センテリェオステシ
新記事
ラヴィさん
リゥさん
シャレンさん
ゼルガさん
飴と花
カテゴリー
独り言 ( 71 )
設定 ( 13 )
予定帳企画 ( 1 )
仮プレ ( 37 )
あいつバトン。 ( 5 )
最新記事
はじめに。
(05/11)
ティースプーンに綻ぶ花
(12/24)
もしかしなくても。
(11/11)
絆色ワーカー
(10/15)
夏色
(08/14)
アーカイブ
2020 年 05 月 ( 1 )
2012 年 12 月 ( 1 )
2012 年 11 月 ( 1 )
2012 年 10 月 ( 1 )
2012 年 08 月 ( 1 )