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ばばさま、ばばさま。
少女が小首を傾げて尋ねる
物を知らぬ少女はいつもそうやって
自らの傍らに常に在る老婆に教えを請う
『 』とはどういういみだ?
いつだって、少女は何処からか言葉を拾ってくる
拾ってきては、尋ねる
自分で調べるこったね
かさばる本を持ち歩き、問われる度に差し出した
少女は一つ一つページを捲っては覗き
尋ねた単語以上の言葉を覚えていく
ばばさま、ばばさま
少女は学ぶ
『 』は、あくなのか?
少女は尋ねる
お前さんはどう思うんだい
少女は思案する
――がなくのなら、あくだ
少女は確信する
……そうかい
ばばさま、わしは、あくなのか
自分でお決め
ばばさま、わしは――
「あくでは、ありたくない」
くすんだ金色の瞳に何を浮かべるでもなく
女は呟いた
……そうかい
「『それなら、考えな』」
お前さんがどう在りたいのか
そのために何をすべきか
「『ただしそれを強いちゃいけないよ』」
何をやるのもお前さんの勝手だ
認めるのはお前さんじゃない
成果を求めちゃいけないよ
名誉を望んじゃいけないよ
お前さんには意味のないものさ
「『お前さんの満足に、他人を付き合わせちゃぁいけないよ』」
いつか聞いた魔女の言葉を繰り返し、繰り返し
女はもう一度、まどろみに落ちた
その言葉と眠りの時間が、溢れそうな何かに蓋をしてくれますように